今年も夏山登山のシーズンがはじまりました!
今年登山デビューする人も、ベテランの人も、ワクワクしちゃいますよね。
さて突然ですが、あなたは「常識のある登山者」ですか?
本記事では、わたしたち山小屋スタッフが、登山者のマナーや行動について思っている本音をぶっちゃけます。
この記事を書いた人:
- 3000m級の山小屋スタッフ
- 山小屋スタッフ歴3年
- 山頂小屋まで40kg歩荷する女子
登山マナーに自信がある方も、そうでない方も、山の常識を再確認して、今シーズンも気持ちのいい登山を楽しめるようにしましょう!
目次
よくある質問編
まず、登山客の皆さんからよくある質問で、困ってしまうFAQを紹介します。
コースタイム
到着までどのぐらいかかりますかね?
まず、一番聞かれるこの質問。
わたしたちの回答はズバり、知りません。
「え、冷たっ!」と思われるかもしれないんですけど、コースタイムは人によってかなり誤差が出るんです。
登山情報に表記されている「平均コースタイム」は、体力のある人は半分以下しかかかりませんが、大幅にタイムオーバーしてしまう方もいます。
なので、本音を言わせてもらうと、「一緒に登ったことないんで、お客さんの体力わかりません」になるんです。
なので、どのくらいかかるか不安な方は
- まず平均コースタイムを調べる
- 自分の体力は一般的にどのくらいか考える
- 休憩・トラブルを考慮して長めに設定
- 出発は早ければ早いほうがいい
ということを踏まえて、山行計画を立てましょう。
平均コースタイムは、休憩時間を考慮してゆっくりめに設定されている場合がほとんどなので、そこまで心配しなくていいですよ。
コースタイムは、ヤマケイなどの登山地図や、「〇〇山・コースタイム」のように検索すれば知ることができます。
当日の天気
当日の天気ってどうですかね?
これも同じくよく聞かれる質問。
そしてこちらの回答も同じく、わかりません。
山小屋スタッフは、山に住んでいるだけで、天気予報は皆さんと同じようにインターネットで調べています。
そして、皆さんと同じように、未来の天気がわかるという超能力はありません。
伝えたいのは、何でも人に聞く(=自分で判断ができない)人は、山に来てはいけないということ。
冷たく聞こえるかもしれませんが、天気やコースタイムについては、遭難など人の命に関わることに繋がるので、ヘタに回答できないのです。
しかも、ご存知の通り「山の天気は変わりやすい」ので、天気予報を100%信頼することもできません。
よって、人に頼らずに自分で状況判断したり、緊張感を持っていたほうが、遭難や事故にあう確率はかなり減ります。
もちろん季節による天気の傾向や、登山道状況については、山小屋スタッフが一番把握しているので、気軽にお聞きください!
ちなみに天気予報サイト・アプリでは、Windyやmountain-forecast.comが、いちばん信頼できるのでオススメです。
シャワー・風呂
シャワー浴びれますか?
最近、お風呂に入れる山小屋が増えてきたせいか、こう聞かれることも増えました。
でも、お風呂に入れるのは水が豊富にある場所のみです。
標高が高い山小屋では、雪がなくなると同時に水も枯渇します。
水資源は死活問題で、雨水に頼っている山小屋も少なくありません。
水がないと、お客さんのご飯を作ったり、食器も洗えないですからね。
渇水期は、雨が降るまで2〜3週間シャワーを浴びれないこともしばしば。もしお風呂に入れるなら、小屋スタッフも入りたいです。あ、もちろん清潔にはしていますよ!笑
「登山=お風呂に入れない」という常識をふまえて、どうしても入りたい人はお風呂のある山小屋を選んだり、登山は日帰りで楽しみましょう。
個室
個室でお願いします!
こちらもお風呂と同じく、個室のある山小屋が増えてきたことによって、よく言われるようになりました。
コロナ以前と比べ、だいぶ状況も変わりましたが、それでも基本的に山小屋では大部屋で雑魚寝です。
今までは、一枚の布団で2〜3人寝るのもザラでした。
もちろん感染予防対策は必要ですが、特に小さな山小屋では、できることに限りがあります。
個室にしてあげたくても、お客さんが少ないと、営業できなくなってしまうんですね。
コロナをきっかけに、収容人数を大幅に減らすことになったせいで、潰れてしまった山小屋は少なくありません。
それでも、どの山小屋もできる範囲で対策を頑張っています。
なので、個室がないと言われても「え?!」と驚かないでくださいね。
登山マナー編
地図・ルート確認
常識中の常識ですが、地図は持ちましょう。
簡単な山ほど、地図を持っていない・ルートも確認していない人が多いです。
ルートを見なければ、そもそも山行計画もたてられませんし、高確率で事故に遭います。
登山ブームなどで、気軽に挑戦する人が増えましたが、登山はピクニックとは訳が違います。
地図を見ないということは、泳ぎ方を知らずに海に入るようなもの。
たとえ「初心者向けコース」だったとしても、山をなめずにしっかりと地図を確認するようにしましょう。
門限は守って!
予約時に伝えても、守れない人がいる「山小屋の門限」。
山では予想外のトラブルが起きたり、急な悪天候に見まわれるのもよくあること。
また山の1日は早く、あっという間に日が沈み、暗くなります。
そして暗くなると、遭難や事故の確率はグンと上がってしまいます。
そのため、山小屋では大抵「15時には小屋に到着してくださいね!」と伝えているんです。
中には13時すぎるとお説教される小屋もあります。
それでも、何事もなかったかのように夕方以降に到着する人がたまにいらっしゃいます。
あなたは良くても、捜索・救助に行かないといけないのは私たち山小屋スタッフです。
山では電波が通じない場所も多いので、連絡もとれないと本当に困るんです。
レスキューは、救助する側にも命の危険・リスクがともないます。
また、そういった人に限って山岳保険に入っていなかったりするので、救助も呼べません。
少しでも到着が遅れそうな場合は、電波が通じるところで早めに連絡を取ってください!
「まぁ大丈夫でしょ」という安易な考えが、自分のみならず他人の身の危険につながっているということを考え、責任ある行動ができるようにしましょう。
体力・スキルの把握
ベテラン登山者に多いのが、自分の体力の衰えに気づかずに無理をして、結果事故を起こしてしまうパターン。
いまだに昔の体力があると信じたり、「自分は大丈夫」という盲信してしまい、タイムオーバーや滑落事故を起こしてしまうんです。
体力は落ちてきているのに、昔と同じ山行計画を組んで、門限から大幅に遅刻する人は少なくありません。
でもプライドがあるので、「いや〜昔はもっと早かったんだけどね!」と、謝りもしなかったり。困ったもんです。
そんな彼らに、わたしたちは言いたい。
「過去の栄光、過去のもの。」
あなたは、自分の体力や経験、過信していませんか?
強行プラン
台風が接近していたり、暴風雨の予報にもかかわらず、無理して強行突破する人がいます。
悪天候時は街中でも危険なくらいですから、山中では比にならないくらい危険が増します。
山に来ても何も楽しめないどころか、命を危険にさらすだけなので、山小屋スタッフから登山の中止を電話で促したりするほどです。
それでも「大丈夫です!予定通り行きます!」と、嵐の中こようとする人がいます。
「もう計画してしまったから」
「ずっと行きたかったから」
「なかなか休みがとれないから」
山に行きたい気持ちはわかりますが、そこはグッと堪えて、天気がいい時にリベンジしましょう。
山は逃げません。
天気が良く、絶景が楽しめる時ほど、気持ちのいい登山はありませんから、その日のためにも賢明な判断をしましょう。
無断キャンセル
事故や体調不良など、やむを得ない理由ならわかりますが、無断キャンセルは本当に困ります。
- 食事を用意している
- 材料費はふもとの数倍
- 連絡ないと捜索騒ぎ
特にごはん。
食材をヘリであげているので、材料費めちゃめちゃかかってます。
この前は近くの山小屋で、20人のツアー団体が無断キャンセルしたって話も聞きました。悪天候でヘリが飛ばなかったので、食材はスタッフ総動員で麓から歩荷していたそうです…
山小屋だけでなく、街のホテルでも居酒屋でも、直前キャンセルは大迷惑。
たったの電話一本で済むことです。
どんなに遅くても、前日の夕方には連絡くらいしましょうね。
ゴミは持ち帰ろう
山でゴミのポイ捨てしないなんて、当たり前でしょ?
「ポイ捨てNG」は常識ですが、山小屋にゴミを置いていく人もいます。
山麓の小屋などは、ゴミを引き取ってくれるところも多いですが、山にゴミ処理場はありません。
そのゴミ、ヘリでわざわざ降ろしてます。
ゴミを降ろすにもお金がかかっているってことです。
なので、自分で持ってきたゴミは、責任持って持ち帰りましょうね。
ロープはくぐらない
きゃ〜綺麗なお花〜っ❤️
写真を撮るためや、休憩するのに、登山道のロープを越えている人がとても多いです。
ロープ、なぜ張られているか知っていますか?
危険防止という意味もありますが、お花や植物を保護するために、関係者がわざわざ設置しているんです。
登山客が歩けば歩くほど、踏まれた高山植物は弱って枯れてしまいます。
なので、お花の写真を撮るためにロープを越えるだなんて、言語道断。
もちろん、お花を摘んだり持って帰ったりするのはもってのほかです。
トイレットペーパー泥棒
街中だけでなく、山小屋にも現れるトイレットペーパー泥棒。
そのトイレットペーパー、ヘリであげるのに一体いくらかかっているか知っていますか?
山小屋のトイレットペーパーは、高級品です。
小屋にある物資は、ヘリの燃料費のぶん、どれもお金がかかっています。
たかががペーパー、されどペーパー。
それ、立派な窃盗です。
山に来てまで、身勝手な行動をするのはやめてほしいですね。
青空トイレ
最後に、山中のトイレ事情。
山では、どこにでもトイレがあるわけではありません。
携帯トイレの持参が理想ですが、どうしても我慢ができないこともあります。
でもこれだけは言わせてください。
川で用を足すのだけはやめてくれ。
なぜならその水は、
- 登山客の飲み水
- その山域の生活用水
- ペットボトル飲料水の水源
などとして使われているからです。
うちの山小屋は昔テント場があったのですが、小屋のトイレを使わずに、沢で用を足す利用者が多かったせいで、水源が大腸菌に汚染され、しばらく水が利用できなくなる被害がありました。ちなみにテント場は再開予定なし。
ちょっとした身勝手な行動が、何千人もの人を困らせることになります。
トイレがない場所でどうしても用を足さなければならなくなったら、なるべく水源から離れた場所にしましょうね。
最後に
「そんなことする人いるの?」と思ってしまうような内容もありましたが、気持ちが高揚しているのか、山では気づかぬうちにマナー違反をしてしまう人もいるのです。
特に人気の富士山や北アルプスなどでは、観光気分でくる人も多いので、登山客のマナー違反に頭を抱えている山小屋も少なくありません。
マナーが悪い人を目にしすぎて、お客さんに塩対応ぎみの山小屋スタッフも見かけたりしますが、本当はいい人なんだろうな〜と思うようにしています。笑
「自分は常識人」と思っていても、誰もが知らぬ間にマナー違反をしてしまったりするもの。
みんなが気持ちよく登山できるよう、自分の行動を改めて、マナーよく山行を楽しみましょう!
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