登山してみたいけど、何を用意すればいいかわからず、困っていませんか?
持ち物だけでなく、どんな山を選べばいいかもわからないし、意外とハードルが高いですよね。
本記事では、女子山小屋スタッフの筆者が、初心者が知っておきたい登山の始めかたを丁寧に解説します。
わたしが紹介します!
- 山小屋(3,000m級)スタッフ歴3年
- ロングトレイルを一人旅(ネパール6週間・ペルー5週間など)
- 海外で6,000m級3座を踏破した山ガール
本記事を読むことで、はじめての登山に必要なもの・やるべきことがわかり、誰でも気軽に登山デビューできるようになります。
登山はハードルが高くて、なかなか一歩踏み出せないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
計画の立てかた
さっそく登山ギアを買いにいきたいところですが、その前に登山計画からはじめましょう。
はじめは簡単な山から
槍ヶ岳に登ってみたい!
もしかするとあなたは、この写真のように、高く険しい山にあこがれて登山をしてみたいと思ったかもしれません。
しかし、何事にもステップを踏むことが必要です。
まずは初心者でも日帰りで行けるような、標高の低い山や、日帰りトレッキングコースなどを選ぶようにしましょう。
「全頂制覇百名山」というサイトが、全国1000以上の山を、難易度別に紹介しているので便利です。
オススメの山・トレッキングコースも、記事後半で紹介します。
地図を買おう
近年は地図を持っていなくても、スマホで簡単に位置情報が確認できるようになりました。
しかし、どんな山でもルートマップを確認し、山行中に地図を携帯するのは常識です。
なぜなら、地図をみないとコースタイムも方向感覚も、位置情報もわからないからです。
「簡単な山だから」と油断している人ほど、いつの間にか道に迷って遭難するものです。
地図をもたずに、基本的なルート・コースタイムを聞いてくる登山者があまりに多くて、山小屋スタッフたちは呆れています。。
最初から完ぺきに地図を読めなくてもいいので、自分の歩くルートとコースタイムくらいは、最低限チェックしておくようにしましょう。
地図のなかでも定番なのが、「山と高原地図」。
全国約1500もの山の地図を出版しており、全国の書店で販売されています。
地図だけでなく、様々なルート・周辺施設の情報も、写真とともに載せてくれているので便利ですよ。
また、スマホの電池切れ・不具合などの理由から、地図は紙がオススメですが、地図と一緒に位置情報も確認できるスマホアプリもあります。
ヤマップのアプリが、登山記録・ナビ機能もついていて、利用者も多いので使いやすいです。
紙の地図と合わせて、サブとして使用しましょう。
ルートを決める
地図が手に入ったら、さっそくルートを決めましょう。
どの登山ルートも、必ず体力レベルとコースタイムが設定されています。
まずは初心者レベルで、コースタイムも4〜5時間前後のルートがオススメです。
コースタイムは、あくまで平均で設定されているので、個人差があります。体力に自信があったとしても、かならず時間には余裕をもって登山計画をたてましょう(コースタイムよりも大幅に遅れて遭難する人も少なくありません)。
ベストシーズン
山や標高にもよりますが、登山デビューするなら夏から秋(7〜9月)がオススメです。
春はまだ残雪もあり、10月は山によっては初冠雪があるので、防寒対策をそこまでしなくても良いぶん荷物も減らすことができます。
ただし、夏は午後になるとカミナリ雲が発生しやすいので注意が必要。
突然のカミナリ・雨雲は急に発生するため、天気予報や雨雲レーダーには出ません。
どんなに晴れ予報でも、突然の悪天候を予期した装備をしていきましょう。
アクセス方法の確認
メジャーな山であれば、地図やホームページにアクセス方法が掲載されています。
(主に北・南アルプスなど)国立公園内・森林保護区のエリアは、マイカー規制をしている場所が多いため、駐車場やバスの時刻表を確認しましょう。
日帰り?泊まり?
最初は日帰りが無難ですが、慣れてきて徐々に長いトレイルに挑戦できるようになったら、山小屋の利用をオススメです。
山小屋はテント泊に比べて値段は上がりますが、それだけのメリット・価値があります。
特に最初のうちは、自分のペース・体力を把握せずに、無謀なスケジュールを立ててしまう人が多いです。
無理な登山計画は、事故や遭難のもとになるので、それを防ぐためにも積極的に山小屋を利用してみましょう。
山岳保険の加入
加入していない人も多い、山岳保険。
初心者向けの山でも、かならず山岳保険には入っておきましょう。
保険に入っていない登山客の方が滑落して、ヘリコプターに救助依頼したことも。保険に入っていない場合、ヘリ救助費用は1時間あたり50〜80万円かかります!
「自分は大丈夫」などと決して思わずに、登山者の常識としてかならず加入しましょう。
ちなみにわたしは、コスパの良いJRO(ジロー)の山岳保険に入っています。
年会費¥2,200と格安なので、命の安全を考え、ケチってはいけません!
登山届の提出
どんな低山・初心者向けの山でも、登山届け(登山計画書)はかならず提出しましょう。
登山届けを提出することで、万が一の事故や遭難にあった場合、救助を呼びやすくなります。
メジャーな山であれば、登山口に登山届を提出できる場所がありますが、最近ではインターネットで事前に提出できるようにもなりました。
詳細は、こちらの記事がわかりやすく解説しているので、参考にしてみてください。
必要なもの
目的地・日数・季節・宿泊先(山小屋/テント)によって、登山装備は大きく異なります。
まずは簡単な山を選んで、必要最低限の道具だけ用意し、慣れてきたらレベルに合わせて徐々にギアを買い足していきましょう。
ここでは、他社商品と比較した結果、わたしが実際に愛用している商品を紹介します。
バックパック・ザック
ブランドやサイズ、機能もさまざまで、どれを買うべきか迷ってしまいますが、バックパック選びで一番重要なのは「自分の体にフィットして背負いやすいか」です。
どんなに多機能で評判のバックパックを買っても、フィットしていなければ体への負担も大きく、すぐに体力を消耗してしまいます。
いきなり通販で買うよりも、いろいろなバックパックを店舗で実際に背負ってみて、背負い心地を確認することを推奨します。
- ザ・ノースフェイス(The North Face)
- モンベル(Montbell)
- コロンビア(Columbia)
- グレゴリー(Gregory)
- オスプレー(Osprey)
- カリマー(Karrimor)
- ドイター(Deuter)
- ミレー(Millet)
容量に関しては、ソロキャンプでは20〜30リットルのものが良いです。
春〜秋の日帰り登山なら、20リットルでも十分ですが、今後いろいろなギア(調理器具など)を加えたり、寒い時期に防寒具をプラスするためにも、25〜30リットルが個人的なオススメ。
ただし、ザックにスペースがあるからと言って、不要な荷物を詰め込んで重量オーバーになる人も多いので注意。
自分の体力にあわせて、程よいサイズのものを選びましょう。
ちなみにわたしは、グレゴリーのズール(ZULU)30を愛用しています。
登山靴
整備されたハイキングコースの利用なら、履き慣れたスニーカーでも十分ですが、登山をするのであれば登山靴が必要になります。
ハイスペックな登山靴でなくて良いので、いろいろなトレッキングシューズを実際に試着してみて、履きやすいものを選びましょう。
ヘタに流行りの登山靴を買って、靴ずれで苦しんでいる登山客をたくさんみてきました…
フィットしていないブーツでの登山は、靴ずれや疲労の原因となってしまうので、デザインだけで選ばない方が良いです。
ちなみにわたしは、履き心地のよいKEENのブーツを使用しています。
ウォーターボトル
水の確保は、登山では欠かせません。
水分の必要量は季節や人によってちがい、水場や休憩所の有無でも、確保しておくべき水量も変わります。
まず登山に慣れていないうちは、必ず水場や休憩所の場所を確認し、こまめな水確保がむずかしいエリアはあらかじめ避けましょう。
ほんの少しの増量でも、山行中は想像以上に体に負荷がかかります。
一度に持ちすぎても重いので、合計1〜1.5リットルぐらいを常備するのがオススメ。
ボトルのサイズは、500ml〜1Lのものを2本持ちするなどして工夫しましょう。
また、使用していない時にコンパクトに収納できる、このようなウォーターバッグがあると、荷物もかさばらないのでオススメです。
食材
山といえば、コーヒーをいれたり、絶景の中で料理をしているイメージがあり、憧れますよね。
ですが、最初は無理せず、コンビニや山小屋のご飯・スナックで済ませることをお勧めします。
なぜなら、山に慣れていないうちはなるべく荷物を軽量化し、体の負荷を少なくしたほうが無難だからです。
むしろ、インスタント食品やコンビニを利用したほうが、バリエーションも豊富で好きな食べ物を選ぶことができます。
ほとんどの山小屋ではお湯も販売しているので、確認して利用してみましょう。
ちなみにわたしは、コーヒー器具を持っていくのが面倒な場合、お湯を注ぐだけのドリップコーヒーを持参しています。最近の商品はどれも美味しいですし、何より荷物が減るのでオススメです!
もし荷物に余裕がある場合、魔法瓶にお湯を入れておけば、どこでも景色を楽しみながらコーヒーを入れることが出来るのでオススメです。
また、最近はどこの山小屋や休憩所にも、名物グルメメニューがあったりするので、そちらを楽しみに山行するのもいいかもしれません。
そして登山に慣れてきたら、バーナーや調理器具を買ってみて、自分で調理を楽しめるようにしましょう!
ヘッドランプ
意外と見落とされがちな必需品である、ヘッドランプ。
山小屋・テント泊する人はもちろん、日帰り登山・トレッキングにも必ず持っていきましょう。
なぜなら、山は本当に何があるかわからず、初心者だけでなく上級者でも遭難するからです。
しかも、初心者向けの山であってもです。
どんなに確率は低くても、万が一のことを常に考えて準備するのは山の常識。
ヘッドライトなどを入れるクセをつけることによって、頭のどこかにいつでも緊張感をもち、その緊張感が事故を未然に防ぐことにもつながります。
「自分は大丈夫」だと思わず、初心者のうちからしっかりと準備できる登山者になりましょう。
衣類
山中では、衣類のパフォーマンスが疲労や命の危険性に大きく影響してきます。
特に防水・速乾性がないと、雨や汗で体を冷やしてしまうので危険です。
登山・トレッキングも楽しむのであれば、アウトドア用品専門メーカーのアパレルを買ったほうがよいでしょう。
また、体が冷えた場合にすぐに着替えられるように、予備のインナーや下着は用意しておきましょう。
- ジャケット/ウィンドブレーカー
- フリース
- ダウン(季節に応じて)
- ベースレイヤー(肌着)
- 靴下・下着
- タオル
- 雨具
- 帽子
山は夏でも寒く、雨は想像以上に体を冷やします。
麓がどんなにあたたかくても、油断せずに防寒対策をしっかりとしておきましょう。
充電器
場所にもよりますが、山は電波が弱いため、街の何倍も速くスマホの電池を消耗します。
また、気温差も激しいため、写真を撮っている間に電池がなくなっているということもしばしば。
電話を使わない時は、フライトモードに設定して電池の浪費を防ぎ、またいざという時のためにモバイルバッテリーも持参しておきましょう。
防水バッグ
衣類の収納は、100均で売っている圧縮袋などでもかまいませんが、耐久性がなくすぐに破損してしまいます。
防水・圧縮・耐久性ともに優れた、このようなドライサックを使用しましょう。
衣類・食料など、内容別にバッグの色を分けると、パッと見て中身がわかるので便利です。
わたしは上記のSEA TO SUMMITのものを使用していますが、もし予算がないのであれば、似た商品を売っている100均もあるので探してみましょう。
現金
お金に関してですが、バス料金や山小屋など、支払いが現金のみの場所はたくさんあります。
財布を紛失したり、雨で濡れたりするのを防ぐため、必要な現金のみジップロックに入れて、ザックの中にしまっておくのが無難です。
ちなみに、大きなお金は崩して小銭を作っておくと、なかなか両替ができない山小屋は助かります!
その他アメニティ
その他、日用品や常備薬も持っていきましょう。
- ウェットティッシュ
- 常備薬・救急セット
- 日焼け止め
- 虫除けスプレー
- 生理用品
- 耳栓
ウェットティッシュがあると、近くにトイレや水場がないときに、手洗いが出来て便利です。
また、山小屋を利用する場合、他の登山者のイビキで眠れないということがないようにするため、耳栓は必須アイテムです!
初心者オススメの山
ここでいくつか、初心者レベルでも絶景が見れるトレイル&山をご紹介します。
上高地(河童橋〜涸沢カール)
まずは王道中の王道ですが、上高地(長野)のエリアです。
上高地はさまざまな名山(槍ヶ岳・穂高岳など)への入り口ともなる場所で、常に多くの登山客で賑わっています。
涸沢カール(写真)は山頂ではないので、「登山」というより「トレッキング」になりますが、程よい登山感覚を楽しみながら絶景を望むことができます。
特に紅葉スポットとしても有名で、初心者でもチャレンジできるので、紅葉シーズンはたいへん混み合います。
日本屈指の紅葉とはいえ、紅葉のピークは何百もの登山客とテントで埋め尽くされ、人とすれ違うのもやっとなほど。
なので、夏か紅葉が終わる頃(10月頭)に行くと、人混みを避けられるのでオススメです。
ただし、10月は初冠雪に注意が必要!
白馬
スキー場として名の知れた白馬ですが、春の残雪期から秋の紅葉まで、登山者にも大人気です。
特に八方尾根や栂池エリアは、ロープウェイで上まで登れるので、トレッキングの入門にオススメ。
白馬三山(白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳)は中級〜上級者むけなので、周辺の登山道をトレッキングしながら、池や山脈の景色を楽しみましょう。
仙丈ヶ岳(南アルプス)
初心者でも3,000m級に挑戦したい!という方にオススメなのが、仙丈ヶ岳(長野)。
北アルプスや白馬・立山に比べると、混雑も少なくゆったりと過ごせる南アルプスエリアにあります。
標高3,033mで、日本百名山でもありながら、初心者でも歩きやすい登山道になっています。
日帰りでもチャレンジできますが、初心者のうちは山頂の小屋で一泊していくのが安心です。
ポイントと注意点
計画・準備はしっかりと
どんなに簡単な山でも、以下の点を踏まえて、しっかり準備するようにしましょう。
- ルート・コースタイムの把握
- 登山開始/終了時間の設定
- 装備は万全か
- 山までのアクセス法
- 山小屋の予約(宿泊の場合)
- 天気予報
- 水場・山小屋の有無
- 登山道情報(通行止めなど)
- 登山届の提出
- 万が一の避難場所(小屋など)
山は朝も夜も早い
初心者がまずびっくりするのは、山の1日の早さ。
行程にもよりますが、日の出前のまっくらな内に出発することはよくある事で、山小屋の朝ごはんもそれに合わせて朝5時〜6時の場合が多いです。
山は日没が早く、また午後に天気が悪化することも多いので、早め早めの行動が重要だからです。
なので安全上、どんなに遅くても、15時には目的地(山小屋など)に到着できるような登山計画を練らなければなりません。
それに合わせて、山小屋の夕食は17時から、就寝(消灯)時間は20時ぐらいにしているところが多いです。
山の天気
先述しましたが、山の天気は急激に変わります。
特に、夏は突然のカミナリ雲が発生しやすく、晴天から一気に雷雨に見舞われたりします。
厄介なのが、そのような雲は天気予報・雨雲レーダーに表示されないということ。
わたしたちの山小屋付近では、7・8月はほぼ毎日、昼過ぎにカミナリが発生します。なので、天気や景色がいいからといってのんびりしすぎるのは要注意。
知っておいて欲しいのが、カミナリは致死率が高く、吹雪や暴風よりも危険ということ。
先シーズンも、わたしの働く山域で、大学生の登山者が落雷に遭って亡くなりました。
周辺に木のない稜線(山の尾根)は、落雷の危険性が極めて高いので、すぐに森の中に身を隠す必要があります。
装備は念を入れて
山の気候は街とはまったく異なり、何が起きるかわかりません。
特に多くの登山者が判断ミスをするのが、服装・食糧・飲み水の量です。
食糧と水が足りなくなっちゃった…
街は暑いから薄着で来ちゃったけど、ダウンないと凍える…
こうゆう登山者の方、よく見かけます。
初心者のうちは特に、「多分使わないだろうな」と思えるものも、念のため持っていくようにしましょう。
賢明な判断を
命を守るために最も重要なのが、万が一の場合の賢明な判断です。
何かトラブルがあっても、どうしても山頂に行きたいという気持ちが判断を鈍らせ、無理をした結果、遭難や死亡事故に繋がることは少なくありません。
突然の悪天候や、怪我などをした場合は、無理をせずに下山・避難をするようにしましょう。
「山は逃げない」という有名な言葉があるように、何かあったときは「また戻ってこよう」と考え、安全第一の行動を選択しましょう。
マナーは守る
最後に、マナーの守れる登山者になりましょう。
- ゴミは持ち帰る
- 登山道のロープは超えない
- 山小屋・テント場のルールは守る
- 他人に迷惑はかけない
当然のことでも、気分がいいと気づかないうちにマナー違反をしていたりします。登山をする人みんなが気持ちよく過ごせるように、節度ある行動を心がけましょう。
まとめ
本記事では、初心者が知っておきたい、登山デビューのために必要な道具・ノウハウを紹介しました。
登山は決してハードルが高いものではなく、誰でも気軽に挑戦することができます。
気軽にできる分、準備と計画だけはしっかりして、安全に登山を楽しめるようにしましょう。
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