家族が重傷や病気で倒れたら、どのような手続きをするべきか、すぐに思い浮かびますか。
そう言われてみると、よくわからないかも。
うちの家族は全員健康だから、大丈夫だと思うけど…
わたしも多くの人のように、「まさかうちの親が」と思っていました。
ずっと健康だと思っていた親が、ある日突然末期ガンで倒れ、緊急入院することになったのです。
それまで当たり前だった日常が一変し、絶望と不安と悲しみに押しつぶされそうでした。
そこで今回は、家族が急に倒れてしまった時にすべき手続きや、知っておくべき保険・サービスを、筆者の実体験をもとに解説します。
ブログのメインテーマからは外れますが、きっといつか誰かの役に立つと思い、簡単にまとめました。
- 自分自身や家族が急に倒れた時、どうすればいいかわからない
- 入院や介護が必要になった時、どのようなサービスが受けられるのか知りたい
- 親と相続の話をしていない・深く考えたことがない
「もしもの時」のことは、誰もが「まさか自分が」と後回しにし、対策を怠ってしまうもの。
実際に起きたときに冷静な行動が取れるよう、今のうちに対処法を考えておきましょう。
目次
現在の状況
まず、ざっくりとわたしの家族の現状について説明します。
- 2ヶ月前に父親が肺ガン(ステージ4)で緊急入院
- 抗がん剤治療を試すも回復の見込みはない
- 本人の希望で、先週からホスピスに移動
- 家族は父親(69)と姉(35)のみ
- 姉はずっとニートだった(今回のことをきっかけに再就職)
- 相続はすべてわたしがしなければならない
- 築50年以上の実家の処分もすることに(半年以内)
このような緊急事態のため、仕事をやめてしばらく実家暮らしをすることになりました。
現在は少しだけアルバイトをしながら、姉と協力して父親の介護手続きや、実家の断捨離をしています。
なお、親が倒れた直後の1週間にしたことは、こちらの記事にまとめているので、ご参照ください。
2ヶ月間でやったこと
それでは早速、この2ヶ月間でやったことを、入居施設・保険サービス・相続にわけて、簡単に紹介します。
病院・施設編
検診・治療
親が倒れてからの約2ヶ月間は、病院で治療を受けながら入院していました。
基本的には緩和治療(抗ガン剤などの化学療法ではなく、痛みを和らげることを優先する治療)を中心に行う方針でしたが、本人の希望で抗ガン剤治療も少し試してみることにしました。
もちろん、抗ガン剤のような化学療法については賛否両論あります。
わたしは、たくさんの癌患者さんのブログを見て、どれが正解なんて誰にもわからないんだなと思いました。
ということで、最終的に本人の意思を尊重し、その都度最適な治療法にシフトしていくことにしたのです。
とにもかくにも、コロナ禍で病床が逼迫している中、優先的に入院させてもらえたことは本当に感謝しています。
コロナ禍ということもあり、医師との面談時以外は父と会えなかったのですが、会うたびに痩せ細っていく父を見て、毎回涙を流しながらの面会となりました。
しかし、ここで問題が。
抗ガン剤治療が終わるまでは、ずっと入院させてもらえるものだと思っていたのですが、これが勘違いでした。
わたしが無知だっただけということもありますが…。
どんなに重度の病状でも、基本的には在宅介護をしながら通院しなければならず、退院を迫られる状況になってしまったんです。
うちは(家の立地や構造・仕事の関係などの関係で)在宅介護が難しいので、通院しながら入居させてもらえる施設を探すことになりました。
ホスピス探し
抗ガン剤の効き目もあまりなく、緩和治療にシフトしていきたいという本人の希望もあり、事前にいくつかホスピスを探していました。
しかし、ホスピスであればどこでも入居可能というわけではありません。
- 介護・病状レベルによって入居可能か変わる
- 対応している医療機器・設備の違い
- 入居費用が大きく異なる
わたしの父は重度の肺ガンのため、大型の酸素吸入器のような、特殊な医療機器に対応できる施設を探す必要がありました。
また、ホスピスは基本的に「延命措置は行わず、本人の寿命までをサポートする」という方針。
抗ガン剤治療のために「通院しながらの入居を許可」している施設は、ほとんどありませんでした。
絶望で泣いているところ、医師に紹介されたソーシャルワーカーさんが、全力で探してくださり、無事に入居先が決まりました。
入居先のホスピスのスタッフも、すぐに見学・相談をアレンジしてくださり、皆さん本当にやさしく協力してくれるので、一気に肩の荷がおりました。
医療・介護関係の方々は、いろいろな経験をしてきている分、一人一人の患者や家族に対して、親身になってサポートしてくれます。
ホスピス入居
ホスピス入居日、まず病院で退院手続きをすませ、介護タクシーを手配してホスピスまで向かいました。
介護タクシーは、リクライニング型の車椅子(小型ベッドのようなもの)がそのまま乗り入れられる、大型のタクシーです。
父が寝たきりの状態でかつ、酸素吸入器も同時に運ばないとならず、自家用車では厳しいのでタクシーを手配しました。
単純な施設間の移動でさえ、このようなサービスが提供されていることに感動です。
ホスピスに引越し、これまで入院していた病院と大きく環境が変わりました。
- 窓のない相部屋→広くて綺麗な個室
- 家具や家電を自由に持ち込んで良い
- コロナ禍でも、予約すればいつでも面会可能
- 病院よりも静かで落ち着いている
- スタッフが常時、患者のケアをしてくれる
特に感動したのが、コロナ禍でも自由に面会させてもらえるということ。
コロナ禍の影響で、病院のみならず、多くのホスピスも面会の制限をしていたこともあり、驚きました。
また、病状の急変や危篤状態になった場合、予約なしで現場に駆けつけ、ホスピスに泊まって「最期」を見とることができるとのこと。
「当たり前の生活を」「最期まで人間らしく過ごす」というコンセプトへの想いが感じられて、病院から移動できて本当に良かったと思っています。
各種サービス契約
入居当日はひたすら、介護サービス関係の方々と面会し、説明を聞いては契約書にサインをしました。
- 施設
- ケアワーカー
- 薬剤師
- 介護器具レンタル(車椅子・クッションなど)
こちらが何もわかっていなくても、必要な手続き・サービスの申請を淡々と説明してくださるので本当に助かりました。
契約が終わったら、部屋に必要な家具や、父に頼まれた小物を買いに行き、少しでも部屋の居心地が良くなるようにしました。
器具の購入・レンタル
要介護レベルによっては、器具や小物のレンタル・購入も必要になります。
わたしの父はもう一人でトイレに行くのが厳しいので
- 差込み型便器(寝たままで用を足せる便器)
- 尿瓶
の購入が別途で必要になりましたが、どちらも安価でした。
また、介護認定を受けていることもあり、車椅子(リクライニングタイプ)やクッションも、わずかな自己負担額でレンタルできるようになりました。
保険・サービス編
ここからは、国や自治体から受けられる、各種保険・介護サービスについて紹介します。
限度額認定証
高額な医療費がかかりそうなとき、医療機関の窓口で提示することによって、保険適用内の医療費の支払いを、自己負担限度額までに抑えることができるもの。
もちろん認定証がなくても、後日差額分を還付してもらえるのですが、認定証を持っていた方がお金の管理がしやすいです。
認定証を受け取るまでは、窓口で毎月30万円以上医療費を払っていました。給付金がもらえると知っていても、さすがに不安でした。。
限度額認定証の申請先は、加入している保険(協会けんぽ・国民健康保険)によって異なります。
申請方法については、下記の記事がとてもわかりやすかったので、参照してみてください。
参照:限度額適用認定証の申請方法とは?必要書類やよくある疑問についてわかりやすく解説
高額療養費制度
医療機関で支払った額が、1ヶ月あたりの限度額を超えた場合に、差額が国から支給される制度。
高額な医療費がかかる場合でも、自己負担が少なくて済むように、国がサポートしてくれているんですね。
本人の年齢や年収などの要素によって、自己負担の上限額は変わりますが、多くの場合1月あたり5万円〜10万円ほどで収まります。
ちなみにわたしは、前述の「限度額認定証」を受け取るまでに支払っていた、高額医療費の還付申請をするために市役所(国保年金課)に行ったのですが、後日自治体から自動的に申請手続きの案内が送られてくるとのことでした。
医療費の支払い情報も、自治体が把握していると。個別で申請しないと給付されないと思っていたのでびっくりです!
ただし加入保険や自治体によって、申請方法は変わるので、詳細はこちらの記事を参照してみてください。
参照:高額療養費(高額医療費支給制度)とは? 申請方法と注意点
要介護認定
介護保険サービスを受けるために、被保険者が必要とする介護レベルを判定するためのもの。認定レベルによって内容は変わりますが、各種介護サービスが受けられるようになったり、給付金を受け取れるようになったりします。
介護保険サービスの申請に、このような手続きがあるなんて知りませんでした。介護認定を受けたことで、ホスピスに入居させてもらえたり、介護費用の自己負担額が大幅に減ったので、とても助かっています。
申請から認定が下りるまでは、およそ1ヶ月〜1ヶ月半かかります。
もし介護保険サービスが必要になりそうであれば、早いうちに申請してしまいましょう。
身体障害者手帳
身体障害のある人に対して、自治体が交付する手帳。症状の種類や等級によって内容も変わりますが、公共料金の割引や税金免除、就職・転職サポートなど、さまざまなサービスを受けることができます。
申請は、自治体の窓口(市役所の福祉課など)で行うことができます。
申請書と別で、医師の診断書・意見書も窓口でもらえるので、担当医に記入してもらい、一緒に提出しましょう。
今日申請してきたのですが、交付まで1ヶ月〜2ヶ月ほどかかるとのこと。もっと早くに知っていたらと思いました。
詳しくは、下記の記事がとてもわかりやすく解説しているので、参考にしてみてくださいね。
参照:【保存版】身体障害者手帳のアレコレをやさしくくわしく教えます!
相続・家の処分編
保有資産の確認
いつか誰にでもやってくる、相続の話。
親が元気なうちに、保有財産の内容の確認はしておきましょう。
- 銀行口座
- 有価証券
- 国債
- 貯蓄型保険
- 車
- 不動産
- 生命保険
- 金庫(暗証番号など)
- 仏壇・墓の管理
当たり前ですが、親が亡くなってからでは遅いです。
わたしの父も、末期ガンという状態ですから、抗ガン剤の副作用や、脳への転移などで、いつ会話が出来なくなってもおかしくない状態です。
本人がそれを一番自覚していて、「普通に会話ができるうちに」と、日々相続の話をしています。
そして何より重要なのが、遺産分配についての話。
相続税対策もたいせつですが、配偶者や兄弟と相続で揉めることになれば、人間関係が悪化し、一生頭をかかえることになってしまいます。
わたしはすでに、どのように資産を管理していくか家族と話し合ったので、将来の不安がほとんどなくなりました。
遺産相続については、多くの人が話題にするのを避け、また多くの人の将来トラブルとして抱えることです。
だからこそ、できるだけ身内とは普段からコミュニケーションをしっかりと取り、早めに遺産相続について話し合っておくようにしましょう。
解体業者の検索
わたしの実家は築50年以上の木造家屋で、豪雪地帯にあるため、かなり老朽化が進んでいます。
もし家屋の破損が原因で、近隣の建物に損害が出た場合(例:台風で剥がれた屋根が飛んでいくなど)、賠償責任を負うことになるので、少しでも早く処分する必要があります。
実家を解体するとなると、解体業者を探して見積もりを取りますが、うちの場合は少し特殊。
家が車道に面していない(舗装されていない小道を進んだ先に立地している)ため、手作業での解体を行ってくれる業者を探さなければなりませんでした。
車道に面していない分、とても静かで「住めば都」なのですが、解体する重機が入れないんですね。
市内の解体業者に電話してまわったところ、なんとか手作業で解体してくれる業者を見つけることができました。
いつ解体するかは未確定なので、見積もりは少し先になりますが、頼める業者があると知っているだけで、一気に不安が解消されました。
各種サービスの解約
親が入院し、実家も近いうちに処分するとなった今、不必要になったサービスを確認し、随時解約しています。
- 新聞
- テレビの受信料
- インターネット
固定電話や光熱費などは、家を処分するギリギリで解約手続きとなります。
わたしの父は、特に会員サービスやサブスクリプションの登録はしていないので、それほど面倒ではありませんでした。
万が一のときのためにも、家族がどのようなサービスに登録しているのか、あらかじめ知っておくことをお勧めします。
断捨離
この2ヶ月間、毎日コツコツごみを捨てていますが、実家というものは想像以上に物が多く、まだ先は長いです。
でも、昔のアルバムや懐かしいものが出てくるたびに歓喜したり、不用品がメルカリで売れたりと、大変ながらに楽しんでいます。
もしあなたも、いつか自身が実家を継ぐ、もしくは処分することになりそうであれば、早めに断捨離を進めておくことをお勧めします。
わたしと姉はまだ30代前半で、体力・気力ともにありますが、歳をとってからでは何倍も辛いはずです。
タンスや大型家電、雛人形など、粗大ゴミの処分は本当に大変です…
ご両親に断捨離の提案をして、それをきっかけに相続の話などもできたら、将来の不安がグンと減るのでお勧めです。
親へのプレゼント
もう衰弱して、立つことも起き上がることも出来なくなってしまった父に、わたしが出来ることは限られています。
「親孝行ができるのは、親の健康があってからこそ」なんですね。
旅行やご馳走はプレゼントできなくても、何かプレゼントできるものはないか。
そう考えたわたしは、ベッドの上で少しでも楽しい時間が過ごせるよう、以下のものを持って行きました。
- iPad(写真・動画・お絵かきアプリ)
- 文庫本
- クロスワードパズル
- 昔のアルバム
- 食べたいもの(果物・調味料など)
特にiPadは、父が好きだったテレビ番組が見れるようにと、中古で購入しました。
個室にテレビは持っていったのですが、BSが映らなかったので、少しでも実家にいた時と同じように過ごせるように新調しました。
見やすさ重視のために、スタンド型のケース付きで、大きめサイズ(11インチ)のものを購入。
もちろんタブレットなんて触ったことがないので、使い方を説明するのは大変でしたが、試行錯誤しながら楽しんでくれているようです。
また、昔の写真のデータをすべて取り込んで、アルバム別にわけてあげたら、とても喜んでくれました。
他にも、冷蔵庫を持っていって食べたいフルーツを差し入れしたり、味気ない病院食をアレンジできるように、調味料を持っていったり。
最初は「何もしてあげられない」と思っていましたが、こんな状況だからこそ、小さなプレゼントでも喜んでもらえることを知りました。
あとは、できるだけそばにいてあげるのが、親の一番の幸せなのかもしれません。
相続・介護の参考資料
最後に、実際にわたしが参考にした書籍・動画を紹介します。
書籍
・「身内が亡くなったときの届出と相続手続き」
身内が亡くなったとき、「いつまでに・何を・どこへ」届け出ればいいのか。
108のチェックリストが載っているので、個人ではつい見落としがちな手続きも、くまなく確認することができるので安心です。
葬儀や遺産相続以外にも、こんなにやることがあったのかと驚かされました。
「その時」はいつ来るかわかりません。
今のうちに目を通しておくことで、いざという時に慌てずに行動することができます。
動画
・中田敦彦のYoutube大学 「介護入門編」
皆さんお馴染みの、あっちゃんの動画です。
ちょうどわたしの父が倒れたタイミングで、こちらの動画がアップされたので、とても助かりました。
誰もが後回しにしがちな「親との相続の話」や、いざというときの介護保険サービスについて、具体的にどのような対応をとったらいいのか、詳しく解説されています。
・リベラルアーツ大学 「医療保険は必要か?」
誰もが心配な、高額医療費。
先述した「高額療養費制度」についての詳しい解説をはじめ、医療費負担に対する不安を払拭してくれる内容になっています。
最大でどのくらいの自己負担額がかかるか、医療保険は加入すべきかなどについて述べられているので、心配な人はぜひ参考にしてみてください!
最後に
まだまだ先は長く、やることも多いですが、少しだけ落ち着いたように思えます。
つい先週までは、入居できるホスピスが見つからず、在宅介護になるかもしれないという、絶望的な状況にいました。
でも、自治体・医療・介護関係の方々をはじめ、さまざまな書籍や動画、先人のブログなど、多くの人に助けられてここまで来れました。
介護関係だけでも、ソーシャルワーカー・ケアワーカー・薬剤師・介護福祉士・介護タクシー・医療機器の業者さんなど、本当にいろいろな職業の方に支えられていることを知り、感謝の毎日です。
ある日突然「その時」がきても、あなたを助けてくれる人々や公共サービスはたくさんあります。
親孝行も相続も介護対策も、「いつか」と思って後回しにせず、今から少しずつ知識をつけていきましょう。
この記事が、一人でも多くの人の役に立てたら幸いです。
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